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March 2010

山の活動 第3回【日之影町森林セラピー・矢筈岳トロッコ道コース】

山の活動 第3回【日之影町森林セラピー・矢筈岳トロッコ道コース】

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 今回ご紹介するのは、癒しの森の案内人・佐藤令子さん(66歳)と歩く、【日之影町森林セラピー・矢筈岳トロッコ道コース】です。

『森林セラピーについて』
 「森林セラピー」とは、整備された森林環境の中で、自然が彩なす風景や香り、音色や肌触りなど、森のいのちや力を感ずることによって、私たちの心身に元気を取り戻させようとすることです。また、森林のもつ「癒し効果」を科学的に解明し、メニューの確立を進めることで、健康増進やリハビリテーションへの活用を図ることをいいます。(森林セラピー推進協議会HPより】
 実際に、国内の森林セラピーのモデルとなっている先進地ドイツでは、行政、医師、研究機関による協力体制が整えられ、社会健康保険も適用されるそうです。国が、森林セラピーを自然療法として、国民の心身の健康増進に効果があると認めてのことです。
 日之影町は、平成18年4月に、全国初、森林セラピー基地と認められ、平成19年にグランドオープン。利用者(観光客含む)の受け入れを始めました。 

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『矢筈岳トロッコ道コース』 
 今回、矢筈岳トロッコ道コースを案内してくれたのは、森林セラピー基地認定『癒しの森の案内人・佐藤令子さん(66歳)』です。
 佐藤さんは、立ち上げ当初から携わっていて、矢筈岳トロッコ道コース(全長7㎞)だけでも、年間60回以上は歩くと言う、超ベテランです。

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当日は、春らしい花曇。少し肌寒さを感じます。

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 矢筈岳トロッコ道は、昭和27年より、昭和37年3月29日までのおよそ十年間、営林署が木材を運び出すために使用した運搬用トロッコ道跡地を整備したコースです。距離7㎞、所要時間3時間。起点から終点までの標高差が100m。道はほぼ平坦で初心者でも安心して歩くことが出来ます。
 矢筈岳と、比叡山に挟まれ、ダイナミックに風景が変化することでも、大変人気があるコースで、終点が車道に繋がっているので、車で迎えにきてもらうこともできます。佐藤さんも一押しのコースです。
 朝九時に起点となる、ゆすなみ峠で準備体操、注意事項などのレクチャーを受け、いよいよ出発です。

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猪が歩き、土を掘り返して、石を落とすので、落石防止の柵が設けられています。

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鳥の羽がむしられた後。山の獣の仕業かな?

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玉ねぎの皮を剥いたような岩。

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人力で削った岩の間を歩きます。

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シダ植物も多いです。宇宙人の顔のようで面白い。

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自然治癒力で生きている杉の切り株。他の切り株は、全て枯れて腐れました。稀にこういうことがあるそうです。

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カメムシの大発生。塊となって、鞠のようです。何をしているのだろう?

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土と葉っぱの山道は、平坦でとても歩きやすい。

『矢筈癒しの森展望所』(2.5km地点)

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木々を抜けると、突如、爽快な景色が!左が、矢筈岳(666m)。右が、比叡山(918m)。間を流れるのが、綱の瀬川。
 大崩山、可愛岳、行縢山、茶臼山、比叡山、矢筈岳、丹助岳は、日本最大の環状岩脈で繋がっているそうです。およそ1500万年前に火山が噴火し、陥没して、巨大なカルデラができたそうですから、古代のロマンを感じます。

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矢筈岳の名は、矢をかける「ゆずる」に似ていることに由来します。西南戦争では、尾根沿いで官軍と西郷軍が戦いました。

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比叡山は、ロッククライミングの名所です。休日には、岩壁を登るクライマーの姿も見られるそうです。

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 矢筈癒しの森展望所では、瞑想をします。自分の呼吸を意識します。鳥のさえずり、川のせせらぎ、風の音。日常を忘れ、深い意識のなかで心を鎮めていきます。
 森林が与える精神的な安らぎを科学的にアプローチすると、スギやヒノキに多く含まれるフィトンチット成分が、自律神経に良い作用があると言われています。  「ストレスホルモン」の濃度が低くなるということも立証されています。
現代病ともいえる「うつ病」の改善や、不眠が治ったという話もあり、遠くから定期的に通っている方もいるそうです。

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日之影特産の柚子を使った、柚子ジュース、柚子のお菓子を食べて、また歩きます。

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森林の中にある、大岩も神秘的です。

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矢筈岳と、比叡山の岩壁がせまる道は、山深い県北でも、とても珍しい景色です。両岸の岩壁の波動がとても強いように感じます。

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比叡山を流れる細い滝。

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イワツツジ

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全長57mの矢筈第1トンネル。手彫りのトンネルで、コウモリもいるそうです。冒険心をくすぐられます。

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道沿いに、田畑がありました。昔は、民家もありましたが、現在は廃屋となっています。

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やぶ椿の群生や、不思議な石など、興味がたえません。

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全長70mの矢筈第2トンネル。不思議とラジオが使えます。
 
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終点が近くなっても、山登りにではないので、きつくありません。

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リンドウの花。もう、春ですね。

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12時過ぎにゴール♪佐藤さん、ありがとうございました!
帰りは知人に車で迎えにきてもらいました。
 
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そのまま車に乗って、中川地区のチューリップ畑へ。時期には少し早かったけど、遠くに矢筈岳と、比叡山を眺めることが出来ます。

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お弁当をいただきました。佐藤さんは、山菜料理の名人でもあります。アザミの炒め物、竹の子とあげ油の煮物、わらびの酢の物など、美味しくて元気が出ます。

佐藤令子さんよりメッセージ

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 季節によって、出会えるものが違います。葉っぱの色や、草花。色んな鳥のさえずり、カモシカに出会うこともあります。雨が降った後の、霧がたなびく山水画の世界もとても美しいです。
 私は、47歳と49歳のときに、脳梗塞で倒れて入院していましたが、山を歩いてすっかり元気になりました。
 癒しの森の案内人になって、一緒に歩いた人が、「私も元気になりました」と言ってくれて、とても嬉しい思いをしています。出会った人と、ハガキの交換などの交流をするのも楽しみの一つです。
 皆さんも、ぜひ、一度遊びに来て下さい。これからは、新緑が美しい季節となりますよ。


森林セラピー推進協議会
〒882-0402 宮崎県西臼杵郡日之影町大字岩井川3398番地の1   
TEL(0982)87-3900   FAX(0982)87-3911
http://www.hinokage.jp/therapy/index.shtml

(レポート 藤木哲朗)
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山の活動 第1回【薪ストーブでエコビレッジ】

山の活動 第1回【薪ストーブでエコビレッジ】

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薪ストーブは暖かい。ゆらゆらと揺れる炎を眺めるのも楽しい。

 今回、ご紹介するのは、薪ストーブによる五ヶ瀬町エコビレッジ構想を掲げる、五ヶ瀬町の市民グループの取り組みです。
 この市民グループは、『Backstay』(五ヶ瀬町を中心に活躍するボーカルグループ。リーダー・那須政彦)、『NPO法人 五ヶ瀬自然学校』(五ヶ瀬町の自然を活かした学びの自然塾。代表・杉田英治)、『五ヶ瀬町林業研究グループ連絡協議会』(五ヶ瀬町の林業家で組織された林業研究グループ。代表・篠村真二)で結成されています。
 昨年四月に、桜花亭(宮野原地区)で、薪ストーブ体験会を開催したのを皮切りに、五ヶ瀬町内での薪ストーブの普及、啓発運動に取り組み、今年の一月からは、本格的に薪の生産と販売に着手しています。

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『薪ストーブでエコビレッジ』事業 吉村優さん(26歳)
 五ヶ瀬町内に薪ストーブを普及させ、山地残材(伐採作業中に出る端材、用途のない間伐材)を薪として活用することにより、山の環境美化、家庭にも環境にもやさしい町づくりを目的としています。また、薪ストーブ利用者の光熱費の削減、林業家による薪づくりという新しい労働の場や、二酸化炭素削減に関する様々な事業の可能性を模索しています。
 現在、山の持ち主の高齢化、林業労働者の不足、コストを理由に、手入れの行き届かない山が増えています。山が荒れれば、災害も増えます。逆に、山に人が入れば、鹿や猪の獣害が減ります。
 昨年は、農林水産省や環境省の事業や補助金を活用して、五ヶ瀬町の個人宅やNPO団体に六台の薪ストーブが入りました。薪は、薪ストーブの他に、風呂の焚物としても利用されています。高齢化が進み、体力的に薪割ができなくなった年配の方に、大変喜ばれています。薪作りは、西臼杵森林組合五ヶ瀬支所で、雨の日に林業者がします。活動を知った林業者の参加希望者が増え始めています。
 薪を売って利益を上げるのが目的ではなく、事業を通して、次世代の子どもたちによりよい環境を残していこうというのが僕たちの活動の根幹にあります。

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Backstay メンバーの落合さん宅での練習風景。週に一度は必ず集まる。本番が近づくと連日練習となる。左から 松本陽介さん(32歳) 落合竜麻さん(28歳) 那須政彦さん(34歳) 長田慎司さん(28歳) 他に、岩本撤也さん(28歳) マネージャー・後藤恵さん(28歳) 事務局・吉村優さん(26歳)

『Backstay』リーダー・那須政彦さん(34歳)
 Backstayを結成したきっかけは、五ヶ瀬町の厳しい現状にありました。
2008年に、商店街では店が三軒なくなりました。それまで、自分の稼業のことしか考えてこなかったのですが、町の衰退を見るにつけ、このままでいいのだろうかと思うようになりました。
 自分の稼業である林業でも、若い子が入るけれども続かない。危険できつい仕事の割には、木材価格が低迷しているので高い給料は得られない。農家の友人に訊いても、みんな苦しいというし、将来、自分の子どもと五ヶ瀬町で暮らしたいけれど、他所で暮らしたほうが幸せなんじゃないかと思ってしまう。結局、夢が描けなかったんだと思います。
 インフラが整備されて、暮らしは便利になったかもしれないけれど、豊かにはなっていないんじゃないか、子どもたちのためにも、本気で町のことに取り組まなければいけないんじゃないかと思うようになりました。
 薪ストーブの発想は当初からありました。薪ストーブの暖かさは知っていたし、みんな大なり小なり山を持っているわけです。せっかく田舎に暮らしているのだから、その資源を生かした暮らしをしたいと思っていました。都会の人は、そういうライフスタイルに憧れているわけだし、五ヶ瀬町は農家民泊もしています。椎茸、釜炒り茶、ワインなどの優れた特産品もあるのだから、一緒にPRすることで、相乗効果が生まれてくると思いました。
 現在、祭りや色んなイベントで歌わせてもらって、薪ストーブのことを伝えさせてもらっています。歌を歌っていて良かったと思います。歌った後だと、不思議と僕たちの話をちゃんと聴いてくれるし、応援してくれます。
 活動はまだ始まったばかりで、薪ストーブに対する理解を広めることや、実際に薪ストーブを購入してもらうのは大変だけれど、活動の火種はついたと思います。諦めずに、燃やし続けることで、色んなところに飛び火していくと思います。

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西臼杵森林組合五ヶ瀬支所の倉庫にストックされた薪。薪は乾燥させた後、販売する。

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薪割り機。仕組みは原始的。前にある羽に対して丸太を後ろから押し、その圧で割る。

 薪は、スギ、ヒノキ、雑木(クヌギ、カシ等)。薪割無し、薪割済み、背板で価格が分けられています。軽トラ一台=約1㎥で、薪割無しの場合、六千円~一万円。薪割済みの場合、一万円~一万八千円です。五ヶ瀬町内は、配達もします。
 全国的にみても、薪ストーブと薪を同時に組織的に広めている市民活動は少なく、もちろん宮崎県では初の取り組みです。さすが、日本最南端のスキー場がある、五ヶ瀬町ならではです。
 木が燃料となるのですから、そういう意味で五ヶ瀬町をみると、まさに宝の山です。また、それを使いながら、育てることができる再生産可能なエネルギーです。那須さんのように、意欲に燃える若い林業家もいます。エネルギーの地域内循環を確立することで、二酸化炭素の削減にも寄与しますし、内需の拡大にも繋がります。エネルギーと、経済の循環は、持続可能な社会をもたらします。
 それに、薪ストーブでエコビレッジ。この響きだけで十分、魅力的ではないでしょうか。実際に、年間暖房費8万円削減したおうちもあるそうで、エコノミーでもあります。
 薪ストーブは、五ヶ瀬町で暮らす人たちばかりではなく、その活動を知った人たちがもう一度、山や木との関係、地域の宝をみつめなおすよいきっかけになるのではないでしょうか。

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薪ストーブの天板の上で、野菜を煮込む。お手伝いをする子どもたち。

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最近の薪ストーブは、煙まで燃やしてしまう。ある一定の温度まで達すれば、煙もほとんどでない。


【薪ストーブでエコビレッジ】事業 
お問い合わせ
Backstay 事務局 吉村優
E-mail bureau@backstay.net

(レポート 藤木哲朗)
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